微生物応用技術研究所研究報告集 第12巻 平成20年度 p.17-42
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原著論文
2.有機農業における経営の視点
谷口曜夫(財団法人微生物応用技術研究所)
有機農産物に対する需要の高まりがある一方、有機農産物の実際の流通量はごく僅かにとどまっている。こうした状況を踏まえ、有機農業の普及促進を願い、平成18年12月には「有機農業の推進に関する法律」が施行されたが、農家にとって有機農業を実施するうえで、その障害となっているものは何か検討を加えることが普及の上では不可欠となる。そこで、本稿では、長年、自然農法を通して有機農業の普及に貢献している特定非営利活動法人エムオーエー自然農法文化事業団の協力を得て、青森県の自然農法実施農家を中心に、経営に関する聞き取り調査を実施し、経営の成否を分ける要因について考察を試みた。その結果、経営の成否を分ける第一にして最大の要因は、貴い理念をもって有機農業を始めた農家が、その理念をどのような状況下にあっても必ず具現化するという強い意志と実行力を持ち続けられるかどうかであるということが判明した。本稿では、有機農業の実施を希望する農家の参考となるべく、農家が貴い理念をもって行動するその具体例を紹介し、考察を試みた。
キーワード:有機農業、有機農業推進法、貴い理念、強い意志と実行力