微生物応用技術研究所研究報告集 第16巻 平成24年度 p.21-53
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助成報告


2.有機農業政策の意義と課題

- ボランタリー・アプローチとしての側面から -

谷口葉子(宮城大学食産業学部)

本研究では政策選択の観点から有機農業政策をボランタリー・アプローチと位置付け、その効果的な運用のために必要な認証制度等の見直しや、関係者の心理に影響する他の政策を設計する上で留意すべき論点を整理した。ボランタリー・アプローチは強制力のある直接規制や経済的手法と異なり、汚染企業や消費者が自主的に環境負荷軽減を図る政策手法であり、1990年代に入って数多く取り入れられてきた。その利点は導入のしやすさと柔軟性にあり、規制導入の脅威が現実的なものである場合には効率的な政策手法であると考えられている。
有機農業は生産者や民間企業が環境保全等の社会的課題の解決のために行う典型的なボランタリー・アプローチである。有機JAS認定制度は有機農産物の流通促進を担うだけでなく、消費者教育等の「ソフト効果」が期待されるが、ボランタリー・アプローチとしての位置付けが明確でないため、これらの効果が最大限引き出されるような設計がなされていないと考えられる。また、ボランタリー・アプローチの利点の一つに柔軟性の高さに起因する効率的なコンプライアンスの実践が挙げられるが、その利点の発揮のためにも、有機農業政策には開かれた議論の必要性が常に留意されなければならない。
さらに、ボランタリー・アプローチの有効性には他の政策手段の存在が大きく関わっているため、ポリシー・ミックスとして検討することの必要性が指摘されている。有機農業を推進する政策を検討する際には、諸規制が互いに効果を高め合うよう、また互いの効果を打ち消さないよう、効率的な制度設計を目指すことが望まれる。

キーワード:ボランタリー・アプローチ、有機農業政策、ソフト効果、規制導入の脅威、ポリシー・ミックス