微生物応用技術研究所研究報告集 第14巻 平成22年度 p.21-31
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転載論文


2.ニンジンおよび雑草のこぶから単離された細菌の同定

河原崎秀志 1, 2・ 後藤正夫 1・ 加藤孝太郎1 ・ 木嶋利男1 ・ 川田宏史2 ・山本圭祐2 ・ 瀧川雄一2(1 財団法人微生物応用技術研究所、 2 静岡大学農学部 植物病理学研究室)

2004年、静岡県の有機栽培圃場で栽培されたニンジンにこぶが形成される病害が発生したことから調査を行った。こぶは直径が約0.1から2cm、淡褐色で表面が粗雑であった。同様のこぶは雑草のホトケノザ、オオイヌノフグリ、カラシナにも認められた。ニンジンと雑草のこぶからは乳白色で硬い集落を形成する細菌が高率に分離された。分離菌株の細菌学的性質はRhizobacter dauci Goto and Kuwataに一致した。16S rDNA塩基配列に基づく分子系統解析により、ニンジン分離菌株がR. dauciの標準菌株と100%相同であることが示された。BOX A1Rを用いたRep-PCRフィンガープリント解析では、ニンジンと雑草の分離菌株はほとんど一致していることが示された。分離菌株をニンジンと雑草の根に接種することで病原性を調査したところ、接種2から5週間後には原宿主植物とその他の植物種にもこぶを形成した。このことから、ニンジンと雑草にこぶを形成する病原菌はR. dauciと同定され、本菌はそれまで知られていたよりも広い宿主範囲を持っていることが明らかとなった。これらの雑草がニンジンこぶ病を引き起こす病原菌の伝染源となる可能性が考えられた。

キーワード:Rhizobacter dauci、細菌性こぶ、ニンジン、ホトケノザ、オオイヌノフグリ、カラシナ