微生物応用技術研究所研究報告集 第13巻 平成21年度 p.33-57
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2.季節と土壌管理はリン脂質脂肪酸分析で評価したキャベツ 連作畑における土壌微生物群集構造に影響を及ぼす

田渕浩康・加藤孝太郎・仁王以智夫(財団法人微生物応用技術研究所)

土壌微生物群集構造の季節変動に対する土壌管理の影響について,リン脂質脂肪酸分析を用い,キャベツ連作圃場を対象に検証した.牛糞堆肥,草質堆肥,そして化学肥料が施用された区画より土壌試料を2003年4月から2004年3月まで毎月採取した.グラム陰性細菌のバイオマーカーモル寄与率はいずれの区画においても4月から9月までゆるやかに低下し,9月から3月まではゆるやかに増加した.糸状菌と放線菌のバイオマーカーモル寄与率は,他の区画に比べ化学肥料区で高い値であった.グラム陽性細菌のバイオマーカーモル寄与率は,牛糞堆肥区>草質堆肥区>化学肥料区の順で増加した.シクロプロピル型脂肪酸のその前駆体に対する比率が高く,飽和脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の比率が低かったことから,化学肥料区では他の区画に比べ土壌細菌に対するストレスがより大きいことが示唆された.リン脂質脂肪酸組成の主成分分析より,土壌微生物群集構造は処理のいかんにかかわらず,季節変化に対して同様な遷移をとることが示された.

キーワード:キャベツ、微生物群集構造、リン脂質脂肪酸、季節変動、畑土壌