微生物応用技術研究所研究報告集 第10巻 平成18年度 p.17-32
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研究紹介
2.堆肥の管理条件と腐熟度の指標に対する微生物群集構造解析の利用
加藤孝太郎・三浦伸章・田渕浩康・仁王以智夫(財団法人微生物応用技術研究所)
同じ原料で、物理性の異なる2つの鶏ふん堆肥を製造した。ひとつはPHP(容積重;260 kg m-3)で、もうひとつはPHW(容積重;190 kg m-3)とし、これら2つの堆肥の有機物分解過程を調査した。堆肥化過程を通じて、温度、無機態窒素含量、コマツナ発芽試験の変化は、PHWよりPHPの方が遅れていた。リン脂質脂肪酸(PLFA)分析により、PHPの微生物群集構造の発達は、PHWより遅れていたことが示された。グラム陽性細菌のバイオマーカー脂肪酸の割合が約50 mol%で一定になったのは、PHPが134日目、PHWが91日目であった。同時に、嫌気性細菌のBacteroidesや好気性細菌のAcetobacterやThiobacillusなどに含まれる水酸基を持つ直鎖脂肪酸の割合は2 mol%以下になった。これらの日にちは、理化学的および生物的パラメーターによって決められた堆肥の完熟段階と一致していた。他の堆肥のデータを加えた一次回帰解析により、コマツナ発芽試験の結果はグラム陽性細菌バイオマーカー脂肪酸の割合と正の相関があり、水酸基を持つ直鎖脂肪酸の割合と負の相関があることがわかった。PLFA割合のクラスター分析により、堆肥中の微生物群集構造は、原料中の窒素含量、製造方法、切り返し頻度の違いによって分類されることがわかった。以上の結果より、PLFA分析は微生物群集構造の検出だけでなく、堆肥の管理条件や腐熟度を追跡できる指標になることが示唆された。
キーワード:堆肥管理、腐熟度、発芽試験、無機態窒素、リン脂質脂肪酸(PLFA)分析