微生物応用技術研究所研究報告集 第9巻 平成17年度 p.27-40
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原著論文
2.有機栽培における施設ホウレンソウの硝酸塩問題とその対策
阿部真久・清水幸一(財団法人微生物応用技術研究所)
有機栽培による施設ホウレンソウを十数年継続した圃場において、夏場のホウレンソウの硝酸塩含量が900mg/100g-新鮮重と高い値を示す場合があり、生産者より内部品質の改善を求められた。本試験は、有機質肥料を用いた栽培土壌の硝酸態窒素量とホウレンソウの内部品質の問題点を掌握し、品質向上を促す対策を検討した。
2001年時における生産地の実態調査の結果、5月~8月に生産されるホウレンソウの硝酸塩含量は基準値を大きく上回ることが確認された。各作型における栽培期間中の積算温度と密接な関係が認められたことから、夏場の地温上昇に伴って土壌窒素の無機化が促進されたため、同時期におけるホウレンソウの硝酸塩含量が高まったことが推察された。土壌の硝酸態窒素量を低下させるには、有機質肥料の質と施用時期を考慮した施肥体系の検討と合わせ、ソルゴーなどの緑肥作物を用いた土壌窒素の持出しが有効であると考えられた。また、葉ネギの混植はホウレンソウの硝酸塩含量を低下させる傾向があり、夏場におけるホウレンソウの品質向上に寄与できるものと考えられた。
キーワード:ホウレンソウ、有機質肥料、硝酸態窒素、積算温度、無機化速度