微生物応用技術研究所研究報告集 第9巻 平成17年度 p.7-25
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原著論文


1.自然農法における農耕地土壌の実態

桑村友章(財団法人微生物応用技術研究所)

1992年度から1996年度までの5年間、全国各地より分析依頼のあった自然農法実施圃場の土壌分析データを、水田、普通畑、施設の3つの地目に分けて解析を行った。調査地点数は、水田、普通畑、施設でそれぞれ654、584、212点であり、調査地点は全国各地に渡っており、土壌群の割合は国が行った土壌環境基礎調査における定点調査、あるいは地力保全基本調査と同じような傾向にあった。表土の厚さはどの地目においても定点調査データよりも高い値を示した。全炭素は、水田と施設では定点調査データより高い値を示した。可給態窒素と全窒素との間には密接な関係があることが示唆された。可給態窒素と有効態リン酸との間の相関は、地目あるいは土壌群により有無が分かれた。水田の非火山灰土において自然農法実施年数と有効態リン酸および塩基飽和度との間に有意な負の相関が認められた。施設の非火山灰土においては自然農法実施年数と有効態リン酸および塩基飽和度との間に有意な正の相関が認められた。主要土壌群における改善目標値内に含まれる割合を見ると、改善目標値内に含まれる割合に関しては、可給態窒素はどの地目においても50%以上であった。有効態リン酸は、水田では低かったが、普通畑と施設では高かった。塩基飽和度は、水田では約67%が下限値以下であったのに反し、普通畑と施設では上限値を超える割合が高かった。普通畑や施設においては有機物が過剰に施用されている傾向にあると推察された。

キーワード:自然農法、土壌診断、有機物、水田、普通畑、施設