微生物応用技術研究所研究報告集 第8巻 平成16年度 p.39-54
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転載論文


3.有機質肥料および化成肥料で栽培したニンジン(Daucus carota L.)における生育量差の影響を除去した品質比較

中川祥治1・田村夕利子1・山本秀治2・吉田企世子3・善本知孝1(1 財団法人微生物応用技術研究所 2 全国MOA自然農法産地支部連合会 3 女子栄養大学)

1997年から1999年の3年間にわたり,有機質肥料がニンジンの品質に及ぼす影響を観察した.すなわち,高度化成,被覆高度化成,米糠ボカシおよびアルファルファ地上部をそれぞれ施用してニンジンを栽培し,根部の品質を比較した.品質項目は,硬度(硬度計),色(色差計),糖,カロテン,ミネラル含量および新鮮物の官能検査である.なお,肥料種間のニンジン生育量の違いが品質比較に影響することを防ぐため,施肥量の調節により生育量差を減少させ,さらにいくつかの品質項目では根重を共変量とした共分散分析を適用した.

1)有機質肥料で栽培されたニンジンは化成肥料のそれと比較して,軟らかく,色が明るくかつ黄色傾向で薄かった.また,糖およびカロテン含量が少なく,Na,PおよびMg含量が多く,Cu含量が少なく,官能検査の“香り”が弱く,“総合評価”が低い傾向であった。

2)ニンジンの品種および栽培年の違いにより,肥料種間における品質差の出現頻度あるいは傾向が若干異なった.

3)本実験で得られた結果は,有機質肥料の施用が必ずしもニンジンの品質向上に結びつくわけではないことを示している.

キーワード:ニンジン,有機質肥料,品質,化成肥料