微生物応用技術研究所研究報告集 第8巻 平成16年度 p.23-37
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2.堆肥および有機質肥料の施用がコマツナ(Brassica campestris L. rapifera group)の硝酸,糖,アスコルビン酸およびβ-カロチン含量に及ぼす影響

中川祥治1・山本秀治2・五十嵐勇紀2・田村夕利子1・吉田企世子3(1財団法人微生物応用技術研究所 2全国MOA自然農法産地支部連合会 3女子栄養大学)

堆肥(主にバーク堆肥)を連用した土壌と未耕地土壌への有機質肥料(米糠+豆腐粕)および化学肥料の施用がコマツナの成分に与える影響を,同じ生育レベルのサンプルにより評価したところ,以下の結果を得た.

1)未耕地土壌に対して堆肥連用土壌で栽培したコマツナの硝酸態窒素含量は高く,可溶性全糖含量は低かった.また化学肥料に対して有機質肥料では,未耕地土壌で栽培した場合に硝酸態窒素含量が高い傾向を示したが,堆肥連用土壌では逆に低かった.一方,保存後のコマツナでは,未耕地土壌に対して堆肥連用土壌で硝酸態窒素含量が高く,総アスコルビン酸および可溶性全糖含量が低い傾向を示した.

2)コマツナの成分間関係では,硝酸態窒素含量と総アスコルビン酸および可溶性全糖含量の間に,高い負の相関が認められた.

3)コマツナの硝酸態窒素含量を決定する要因は,収穫時土壌中の硝酸イオン濃度であったが,未耕地土壌では塩素イオン濃度も関与していた.未耕地土壌への有機質肥料施用でコマツナの硝酸態窒素含量が高い傾向を示したのは,未耕地土壌および有機質肥料の低い塩素濃度(含量)が原因であると考えられた.

4)以上の結果は,堆肥や有機質肥料の使用そのものが必ずしもコマツナの成分を向上させるわけではないことを示すと同時に,有機栽培を実施する上では土壌や施用する有機物の塩素濃度(含量)についても,検討が必要であることを示唆している.

キーワード:コマツナ,堆肥,有機質肥料,品質関連成分,塩素