微生物応用技術研究所研究報告集 第5巻 平成13年度 p.17-31
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原著論文
2.酸性および塩類土壌に栽培したマメ科作物の生育、根粒形成ならびに窒素固定活性に及ぼす有機質資材の影響
仁王以智夫(微生物応用技術研究所)
酸性土壌でマメ科作物を栽培し、生育、根粒形成ならびに窒素固定に及ぼす有機質資材の影響を検討した。静岡大学農学部付属農場(静岡県藤枝市)より耕地土壌(表層)を採取し、pHを5.0に調整した後、2種の有機質資材(バーク堆肥及び石灰添加ピートモス、それぞれBC、TPと省略)を4%混合し、ポットにつめた。ダイズ、インゲン及びアルファルファを無菌状態で発芽させ、根粒菌(それぞれBradyrhizobium japonicum IFO12608、Rhizobium leguinosarum IFO12612及びR. meliloti IFO12611)を接種して開花期まで栽培した。収穫後、地上部と根の重量を測定し、また根粒形成、根のアセチレン還元活性、根圏細菌数、及び菌根菌の感染率を測定した。さらに植物体の無機成分を測定した。供試した2種の有機質資材はいずれも酸性土壌でのマメ科作物の生育を促進した。地上部の生育はTPと比べてBCでより促進された。有機質資材、特にBCは根粒形成、根のアセチレン還元活性に対しても促進効果を示した。植物体の無機成分のうち、窒素濃度は有機質資材の添加によって高まった。
同様の実験を圃場において行った。静岡大学農学部付属農場(静岡県藤枝市)内に1m×1.5mの区画を設け、有機質資材無添加区、BC 4%添加区、TP 4%添加区の3処理区を設定した。それぞれの区に酸性(pH5.0に調整)、石灰でpH6.5に中和、食塩水で潅水、の3処理を行った。各区画に無菌発芽させて根粒菌Bradhyrhizobium japonicum IAM 12608を接種したダイズ5個体ずつを移植し、6週間栽培した。収穫後、地上部と根の重量、根粒数と重量、根の窒素固定(アセチレン還元)活性を測定した。酸及び塩類ストレス下でのダイズの生育は有機質資材によって促進された。酸性土壌で有機物を添加してダイズを栽培した後の土壌pHは栽培前と変化なく、有機物の促進効果は土壌の中性化以外の要因によることが示された。
自然突然変異株を用いて土壌中での根粒菌の生残率を測定した。根粒菌の生残率は有機質資材の部分でより高いことが示された。
キーワード:酸性土壌、塩類土壌、根粒菌、窒素固定、有機物施用