微生物応用技術研究所研究報告集 第4巻 平成12年度 p.45-59
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助成研究報告


4.緑肥すき込みに伴う畑作物の生育障害回避のための非病原性Pythium属菌の利用に関する研究

-緑肥すき込み直後のキュウリ苗立枯病に対するPythium oligandrumの抑制効果-

東條元昭・中山佳代子(大阪府立大学農学部)

緑肥すき込み後に発生するキュウリ苗立枯病に対するPythium oligandrumの発病抑制効果と同菌の緑肥分解能を温室内と圃場で調べた。エンバクとアカクローバの各緑肥を1~2% (w/w)になるようにすき込み、その直後にキュウリを播種すると苗立率が低下した。一方、緑肥すき込みと同時に約1000 CFU g-1-dry soilになるようにP. oligandrumを接種すると、緑肥をすき込まない場合と同じレベルに苗立率が回復した。緑肥をすき込んだ土壌中におけるP. oligandrumの密度は接種の10日後に50~200 CFU g-1-dry soil減少し、30日後においても同様の菌密度で維持された。苗立枯れの主因であるP. ultimumとP. spinosumを部分殺菌土壌に接種して病土を作製し、P. oligandrumと緑肥を混和して苗立率を調べたところ、P. oligandrumの接種により苗立枯れが抑制され苗立率が増加した。P. oligandrumの緑肥分解能を調べるため、殺菌土壌中にP. oligandrumと緑肥を混和して土壌から発生する二酸化炭素量を測定したところ、P. oligandrumの接種による二酸化炭素量の発生量の増加はほとんど認められなかった。また、P. oligandrumを接種した土壌中での緑肥重の圃場条件下での減少率を緑肥すき込みの30日後まで調べたところ、P. oligandrumを接種しない土壌と同じであった。これらの結果より、P. oligandrumを緑肥すき込みと同時に土壌に接種することで、すき込み直後に発生する病害を軽減できることが明らかになった。しかし、本菌は緑肥分解能をほとんど持たず、本菌の接種による緑肥の分解促進効果はないことがわかった。

キーワード:生物防除資材、緑肥分解、非病原性Pythium属菌、病原性Pythium属菌、Pythium oligandrum