微生物応用技術研究所研究報告集 第4巻 平成12年度 p.29-43
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助成研究報告


3.高い植物親和性とカビ病に対して拮抗性を示す蛍光性Pseudomonasの植物親和性に関与する遺伝子の解明と植物高親和性微生物資材の開発研究

小柳津広志(東京大学大学院農学生命科学研究科)

この研究では、植物根(シバ)親和性細菌Pseudomonas fluorescens HP72の植物病原性菌類に対する拮抗性の原因を解明し、この菌株を利用して農業資材を開発することを目指した。はじめに、この菌株がシバの根の生長を促進する効果を示すかを調べたところ、シバの根の生長を著しく促進することが分かった。次に、この菌株の生産する植物病原性菌類に対する拮抗性物質2,4-diacetylphloroglucinol (Phl)の生産が植物病原性菌類に対する拮抗性の原因となっているかを調べるため、拮抗物質を生産しない変異株を4株作製し、これが拮抗性を示すかを調べた。この結果、全ての変異株は拮抗性を示し、拮抗性の原因が拮抗物質の生産とは関係ないことが判明した。これらの変異株のシバの根での生残性を調べたところ、親株と同様に生残し、この生残能力が拮抗性と関連していると推察された。以上のことから、HP72の植物病原性菌類に対する拮抗性は植物根親和性が原因であると結論づけた。

キーワード:Pseudomonas fluorescens、植物根親和性、植物病原性拮抗菌