微生物応用技術研究所研究報告集 第3巻 平成11年度 p.95-109
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助成研究
9.低投入持続型を目指したマメ科緑肥草生マルチ不耕起水稲栽培における緑肥残査の施肥効果とその滲出物の雑草抑制効果の定量的評価
日鷹一雅・嶺田拓也(愛媛大学農学部附属農場)
外部エネルギー低投入持続型の栽培技術の一つとして、マメ科緑肥草生被覆・不耕起栽培法に注目し、今回は緑肥のもつ施肥効果と抑草効果について解析するための実験を進めた。栽培実験では、レンゲ、ヘアリーベッチ、シロクローバーの各種マメ科緑肥区と無処理の裸地区の4処理、2反復とし、栽培は不耕起・無農薬・無施肥・無除草で移植栽培を行い、水稲の生育収量、雑草発生、窒素養分の推移を調査した。
水稲の生育経過は、栄養生長初期が停滞気味にあり、繁殖生長期に耕起より生育が旺盛になる秋優り型を示した。収量は放任区の低収性を除いて、各処理区500kg/10a以上を示した。マメ科草種間ではヘアリーベッチが最も生育旺盛であり、収量も約9俵 (536kg/10a) が得られた。
コドラート法および全数調査による雑草調査から、雑草発生量は放任区とマメ科草種間で明らかな差異が認められ、不耕起とヘアリーベッチの草生マルチの組み合わせでは、ノビエ類などの強害雑草の発生密度は抑制された。とくにヘアリーベッチでは、ノビエ類などの強害雑草の発生は強く抑制された。本田における雑草発生の抑制に関与すると思われる一要因として、被覆効果の目安になる緑肥残査の残存量を調査したところ、レンゲ、シロクローバー、ヘアリーベッチの順に、緑肥は遅くまで残存した。さらに緑肥残査のアレロパシー効果の関与の可能性を検討するために、ヘアリーベッチの緑肥残査の水抽出液の雑草発芽抑制の関与について、in vitroの実験を行い、強い発芽阻害を確認できた。
また土壌溶液中のアンモニア態窒素濃度の推移は、分けつ期での濃度は一般に耕起栽培する場合の濃度を大きく下回った。これは、緑肥残査の分解過程が不耕起草生で特徴的でることを示唆している。
キーワード/Keywords
草生マルチ/living mulch、マメ科緑肥/leguminous plant manure、他感作用/allellopathy、不耕起/no-tillage、雑草管理/weed management、低投入持続型水稲栽培/low-input sustainable rice cultivation