微生物応用技術研究所研究報告集 第3巻 平成11年度 p.71-78
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助成研究


6.枯草菌を用いた付加価値堆肥の製造とその効用の実証

正田 誠(東京工業大学資源化学研究所)

我々が見い出した枯草菌は、20種以上の植物病原菌の増殖をin vitroで抑制する。本研究ではこの枯草菌の有用性を実証するために以下の三つの項目について検討した。

①汚泥を原料とする堆肥化を行い、この初期段階に枯草菌を添加し、堆肥化の過程で本枯草菌が生存しうるかどうかを検討した。その結果、50℃の高温条件においても添加した枯草菌は生存し、ほぼ一定した菌濃度を維持した。こうしてできあがった製品は、病原性糸状菌に対して in vitroで増殖の抑制効果を示した。

②2種類の堆肥を用い、この堆肥に枯草菌を混合した後、枯草菌入り堆肥が植物病原菌の増殖をin vitroで抑制するかどうかを検討した。用いた堆肥の原料によるが、初期菌濃度を高く保つと安定して枯草菌が生存し、6種類の植物病原菌に対して抑制効果を示した。

③食品産業の未利用資源の代表としてオカラを原料として枯草菌の培養を行い、この生産物を用いた植物病の抑制試験をポットテストによって検討した。Rhizoctonia solaniによるトマト苗立枯病はオカラ培養物の添加により発病率が有意の差で抑制されることがわかった。このとき土壌から枯草菌、および枯草菌のつくる抗菌物質iturin Aとsurfactinも検出され、発病抑制がこれらの抗菌物質によることが実証された。

キーワード/Keywords
枯草菌/Bacillus subtilis、堆肥化/composting、植物病原菌/plant pathogens、病害抑制/suppressiveness、抗菌物質/antifungal substances