微生物応用技術研究所研究報告集 第3巻 平成11年度 p.51-69
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助成研究


5.蛍光色素結合レクチンを使用した外生菌根性菌糸の特異的検出法の確立と野外での応用

立石貴浩・高津文人(京都大学生態学研究センター)

菌糸の細胞壁表面の糖鎖認識プローブである5種の蛍光色素結合レクチンと2種の蛍光色素を用いて、外生菌根菌の栄養菌糸の細胞壁表面の糖鎖構成を定性的に分析した。外生菌根菌の栄養菌糸の細胞壁表面は、主にβ-1,4-グルカンとβ-1,3-グルカンで構成され、N-アセチルグルコサミンのオリゴマーの側鎖が均一に存在した。また、α-D-マンノースの側鎖が均一または部分的に存在した。一方、AmanitaceaeにおけるSect. Amanitaの3種の栄養菌糸の表面には、特異的にβ-D-ガラクトースまたはその誘導体の側鎖が存在した。この現象は、子実体組織を構成する菌糸に対しても認められた。以上の結果から、β-D-ガラクトースおよびβ-D-Gal 1→3 GalNAcを認識するピーナッツ凝集素 (PNA) は、供試したAmanitaceaeにおけるSect. Amanitaの菌糸や菌根を検出するプローブとして有効である可能性が示された。そこで、これを検証するため、アカマツ-コナラ林においてAmanita pantherinaの子実体が発生した地点の土壌を採取し、土壌中の菌糸、および菌根のマントル表層を構成する菌糸の細胞壁の糖鎖構成を、糖鎖認識プローブを用いたバインディングアッセイにより分析した。土壌より採取された外生菌根のうち11サンプルを任意に選び、マントル表層の菌糸について、CW、WGA、PNAによるバインディングアッセイを行った。さらに、同土壌より抽出された土壌菌糸についても同様の分析を行った。多くの菌根のマントル表層の菌糸に対してWGAが結合したが、一部の菌根では部分的にしか結合しないものが認められた。また、PNAは菌根のマントル表層の菌糸にはほとんど結合しなかった。一方、PNAが結合した菌糸は、A. pantherinaの外部菌糸に該当すると考えられるが、A. pantherina子実体発生地点の土壌における菌糸長は、全菌糸長の0.3%に相当した。

キ-ワ-ド/Keywords
外生菌根/ectomycorrhizae、FITC結合レクチン/FITC labeled lectin、菌糸/hyphae、表面糖鎖/surface carbohydrates、細胞壁構造/cell wall structure