微生物応用技術研究所研究報告集 第3巻 平成11年度 p.9-26
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助成研究


1.合鴨利用・減農薬水田土壌の微生物フロラに関する研究

佐藤 匡(東北大学遺伝生態研究センター)

水田に合鴨を導入して除草を行ない、農薬を施用しない水田土壌の微生物フロラの調査を、合鴨を導入しない対照区と比較しながら行なった。また、平行して稲の生育・収量、土壌の二、三の理化学的性質の変化を調査した。除草は合鴨導入により可能であることが観察された。稲の生育経過は両区で明確な差が認められなかった。しかし、収量は対照区で僅かではあるが合鴨区を上回った。pHは時間経過とともに対照区で低下するのに対して、合鴨区では漸次上昇する傾向があった。電気伝導度は合鴨区で大きく上昇した。一方、酸化還元電位は両区でほとんど同様に変化した。今後、合鴨による土壌の撹拌効果と排泄物の微生物による代謝の影響の両面から解析する必要のあることを示している現象である。その他、アンモニア態窒素やリン酸についても、とくに合鴨導入の影響を考えさせる現象は捉えられなかった。微生物フロラに関しては、全細菌数が合鴨区表層土壌で多く検出され、細菌の生育に対して合鴨がプラスに影響していることが推察された。グラム陰性細菌数は合鴨区で多い傾向にあったが、全細菌数ほどには対照区との差は顕著ではなかった。この細菌グループの外界の変化に対して鋭敏に対応するという一般的性質を考慮すると合鴨の影響の内容をさらに吟味する必要があると思われた。嫌気性細菌数については、好気性細菌数のように合鴨の影響の有無を明確にとらえることはできなかった。その他、アンモニア酸化細菌数は合鴨区で合鴨導入後に、とくに表層土壌で増加し、排泄物からのアンモニア生成の影響をうかがわせた。対照区および合鴨区から、それぞれ合鴨導入前および導入後に相当する時期から、細菌を各35~40菌株を分離しておおまかな分類群に類別した。その結果、導入前は両区の細菌群の構成はきわめて類似していたが、導入後では合鴨区と対照区で異なる構成になった。合鴨導入によって微生物フロラが変化する可能性を示した。

キーワード:水田/paddy rice field、土壌のミクロフロラ/soil microflora、合鴨水稲栽培/rice-cultivation by grazing ducks、除草/weed-control、環境/environment