微生物応用技術研究所研究報告集 第2巻 平成10年度 p.69-83
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助成研究


7.マメ科緑肥の分解消失特性とその施用土壌の微生物活性の解析

-クロタラリアーキャベツの作付体系下におけるキャベツ生産と跡地土壌の諸性質およびその後作ダイズの生育と土壌微生物活性-

吉田重方・マッパオナ・田代 亨・江澤辰広(名古屋大学農学部附属農場)

クロタラリア(Crotalaria juncea)はマメ科植物のなかでも高いバイオマス生産能と窒素固定能をもつ優れた緑肥植物であり、土壌にすき込んだのちも速やかに無機態窒素を多量に放出することは前年度に報告した。
そこで、そのような特性をもつクロタラリアを緑肥として栽培し、その後作にキャベツを作付ける1年2作の作付け体系で3年間ドレンベッドを用いて栽培し、キャベツ生産に対するクロタラリア緑肥のすき込みの影響およびクロタラリアのすき込みに伴う土壌理化学性の変化等について調査した。ついで、上記の両作物の栽培後のベッドに無施用条件下でダイズ(同一遺伝系統の根粒非着生ダイズ[T201]と根粒着生ダイズ[T202])を栽培し、ダイズの生育収量、根粒着生、窒素固定(アセチレン還元能)および菌根菌の感染状況を調査した。その結果、下記のことが明らかとなった。

1.クロタラリアのすき込みはいずれの栽培年度においてもキャベツ生産に対して促進的に働き、その効果は施肥水準の低いものほど明確に認められた。

2.クロタラリアのすき込みは土壌化学性に対して顕著に影響しなかったが、気相率の増加、固相率や土壌硬度の低下など土壌物理性に対しては顕著な改善効果を示した。

3.クロタラリア―キャベツの栽培跡地に後作として栽培した根粒非着生ダイズの地上部生育量、若莢収量はクロタラリアのすき込みによって高まったが、根粒着生ダイズでは一定の傾向を示さなかった。しかし、根粒非着生ダイズでは根粒着生ダイズに比べて地上部生育量、若莢収量とも顕著に低い値を示し、根粒着生ダイズでは着生根粒の窒素固定能が効果的に働いていることが明らかとなった。

4.アセチレン還元法によって測定した根粒着生ダイズの窒素固定能はクロタラリアのすき込みによって高まる場合が多かったが、逆に低下する場合もみうけられた。

5.ダイズの地上部新鮮重と可食莢重の間、およびそれらと根粒着生や窒素固定能の間には高い正の有意な相関がみられた。

6.根粒非着生ダイズ根に対する菌根菌の感染率は施肥水準、クロタラリアのすき込みの有無によって影響されず、ほぼ70%程度の値を示した。これに対して、根粒着生ダイズ根に対する菌根菌の感染率は40~60%を示し、また、クロタラリアのすき込みの有無にかかわらずキャベツに対する施肥水準の増加に伴ってやや低下する傾向を示した。

 

キーワード:マメ科植物、クロタラリア、キャベツ、作付体系、窒素固定、菌根菌