微生物応用技術研究所研究報告集 第2巻 平成10年度 p.55-67
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助成研究
6.難防除土壌伝染性植物病害の生物的防除法開発に関する研究
古屋成人・川波政和・飯山和弘・松山宣明(九州大学農学部)
イネ葉面より分離したBacillus sp. AB89株はトマト青枯細菌病菌やクワ褐斑病菌等の各種重要植物病原微生物に対して耐熱性、易熱性の数種の抗菌物質を産生した。分離細菌の細菌学的諸性質を調べた結果、AB89株はBacillus subtilis の一系統であることが明らかとなった。そこで本分離株のトマト青枯細菌病並びにクワ褐斑病に対する防除効果について検討した。B. subtilis AB89株の細菌懸濁液中にトマト幼苗の根部を接種し、汚染土壌に移植したところ、著しく発病を抑制し、高い防除効果が得られた。また、本細菌の生菌接種あるいは培養ろ液処理をしたクワ葉は褐斑病の発病が顕著に抑制された。さらに本細菌の生菌液に浸漬接種したクワ葉を用いて養蚕したところ、カイコの生育には全く悪影響を示さなかった。本細菌はトマト青枯細菌病菌に対しては少なくとも4種類以上の抗菌物質を、またクワ褐斑病菌に対しては分子量819の耐熱性で、ベンゼン環を有する糖関連性の複雑な構造である抗菌物質を産生することが明らかとなった。以上の結果より、B. subtilis AB89株は各種重要植物病原微生物に対して複数種類の抗菌物質を産生し、各種病害に対する防除効果も高いことより生物的防除素材としての有効性が示された。
キーワード:枯草菌、抗菌物質、トマト青枯細菌病、クワ褐斑病、生物的防除