微生物応用技術研究所研究報告集 第2巻 平成10年度 p.19-32
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助成研究


2.管理の異なる畑地土壌の微生物的,生化学的性質の比較

仁王以智夫(静岡大学農学部)

1.
チャの根に生息する根圏細菌および窒素固定菌の種類を,自然農法(大仁)と慣行農法(金谷)を行っているチャについて比較した。大仁のチャの根から分離された一般細菌の約60%はBurkholderia gladioliであり,また14%はB.cepaciaであった。一方,金谷の細菌種構成は自然農法とは異なっており,単離菌株の51%は用いた同定システム(MIS)のデータベースには存在しない種であった。同定された種については,全単離株の20%がB.cepacia,7%がB.gladioliであり,その他にBacillus,Xanthomonas,Micrococcusなども単離された。蛍光性のPseudomonas は自然農法の根のみより単離された。両種の茶園においてチャの根から分離される窒素固定菌について検討を行った。土壌とは異なって根の窒素固定菌数には両農法間で大きな差はなかったがその性質には大きな差が見られた。金谷のチャの根の窒素固定菌は,単離して継代培養を重ねるうちに活性が失われ,最終的にはすべての単離株が窒素固定活性を持たなくなった。一方,大仁の窒素固定菌でも活性を失うものが多かったが,最終的に25%は活性を保持していた。その大部分はEnterobacteriaceaeのKlebsiella,Enterobacter,およびKluyveraに属するものであった。

2.
生化学活性の面より土壌の特徴づけを行うために,施肥法の異なる種々の土壌の微生物バイオマス,内部呼吸,フロレセイン二酢酸加水分解活性,リン脂質脂肪酸,ポリヒドロキシ酪酸量を測定し,土壌間の比較を行った。化学肥料を主とする施肥法の土壌では全リン脂質脂肪酸に対するポリヒドロキシ酪酸の割合が高く,この比が有機農法の指標となる可能性が示唆された。

キーワード:根圏細菌、窒素固定菌、蛍光シュードモナス、自然農法、土壌生化学活性