微生物応用技術研究所研究報告集 第2巻 平成10年度 p.9-17
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助成研究


1.水田土壌中のメタン生成微生物生態系

-水田土壌中のメタン生成活性の土壌画分、水稲根および植物残渣における分布とその季節変化-

上木厚子・加来伸夫(山形大学農学部)

水田土壌中の土壌画分、水稲根と植物残渣である稲わらに付着しているメタン生成活性の測定方法を検討してその分布を明らかにし、さらに各活性の季節変化を調べた。土壌画分、水稲根および植物残渣のいずれにおいても、水稲移植直後の5月下旬からすでにメタン生成活性が検出された。土壌画分のメタン生成活性は6月までは低く、7月中には高い活性が維持されたが、その後急激に低下し、9月にはほとんど検出されなくなった。水稲根のメタン生成活性は6月までは低いレベルだったが、7月上旬から増加し、7月中旬まで移植直後に比べかなり高い活性が維持された。その後活性は急激に低下したが8月中旬には再び増加し、9月までの間に低いレベルまで低下した。土壌中にすき込まれた稲わらを主体とする植物残渣のメタン生成活性は5月下旬には増加し、6月初旬に高い値を示した後一旦低下し、6月下旬から7月上旬に再び高い値を示した後、急激に低下した。これらのメタン生成活性の季節変化と、同じ圃場に設置した一株枠中の水稲根と植物残渣の重量の季節変化から、各画分のメタン生成活性の土壌中の全メタン生成活性に対する寄与率を見積もった。水稲作付け初期においては植物残渣に、後期においては水稲根に付着した各活性が、水田土壌中のメタン生成活性を増加させる大きな要因になっていることが示された。

キーワード:メタン、水田土壌、嫌気性細菌、温室効果ガス、湛水土壌